本の紹介、日本の現代史「まで」の歴史について



記事が長いのでまとめると、明治までの二百年をまとめたもの、同じく明治までの各年代ごとに当時日本人が何をもっとも尊いとしていたのかを分析したもの、そして明治の大変革について金銭面から実に的確なツッコみを入れたもの、三冊の本の紹介です。

良書がことごとく絶版でなかなか悲しいものがありますが、図書館で借りたり古書を入手したりと手立ては幾つかありますよね。

先日、ずっと欲しかった本についてふと思いついて出版社に電話をしたら在庫が一冊だけあります、ということで直接求めさせていただきました。嬉しかったなあ。箱に汚れがあったとか取次から引き合いがあっても何年も断っていた本だったとか。実際に手にしてみると天の部分にちょいとしみがあるていど。そもそも箱もカバーも帯も捨て去る主義なのでまったく気になりませんでした。が、この本については記念に箱ごととっておこうと思います。
気が付いたら代金引換なのに送料と代引き手数料も出版社が負担の手配で、そのうえ午後に電話したら翌日早朝には届けられるという親切さ。ありがたいです。大事に読み込もうと思います。

該当の本は惜しむらくは絶版でAmazonでは定価の二倍~三倍の値がついておりまして、元が高価なのでどうしようかな~でも他では入手できないしなあと注文をためらっておりました。
モノを増やさないように努力している折柄、でも手元に置きたい、と願いつつ、ふと思い出すのはあるイスラム学者が一切本を手元に残さない主義で、それは万が一の戦禍を想定してのことで、日本の学者が感心したら書物に頼ってどうする、と一喝されたということです。「本の千冊や二千冊、頭にいれられないでどうするのだ」と。その学者は政変のため日本に来日というか亡命的にいらして生活をされていたそうですが、複雑な儀礼儀典書の内容も完璧に暗唱再現ができ、何世紀にもわたる後半な地域の政治宗教芸術文化を立板に水のごとく再現できた。
と、どなたのことだったかな~と感動したわりにはすっかりお名前を忘れているわけですが、でもどの本に書いてあるかは覚えているのであとで確認してみます(今やれよwwww)。

本はなあ。無限に欲しくなりますもんね。

うーん。姐さんも読了時には全暗記、が理想ではありますがダメですね、最近は全然頭に入りません。もっと若い頃に勉強しておくのだったと取り返しのつかない後悔をしております。とくに漢文と古文書。日本史をやるなら読めて当たり前~なさまざまな史料が全然読みこなせない。書き下し文と照らし合わせてひいひい言いながら「眺めて」います。

が、わからないのは教える側がわかっていないから。というのもひとつあるな、としみじみ思うのですよ。

だってね、われわれの暮らしにもっとも密接で重要なお金のこと、政治のこと、安全のこと、信仰のこと、みんなで社会生活を円滑にこなしていくために知っておくべきさまざまなことって、ちゃんとわかっている人からうかがうと本当にわかりやすいじゃないですか。

それが特殊であればあるほど、その分野で超一流の学者というのはとんでもない普遍性を持つにいたるものですし。
たとえば。

甲骨、金文なら白川先生。

宇宙なら川口先生。

スケートなら浅田真央。

偉人のレベルですごいひとってとっても平易に難しい内容を説明できる。相手のレベルに応じて話すことができる。真央ちゃんについても「フィギュアスケートっていいな」のひとことだけで万感胸に迫るほど「わかる」伝え方をしていますよね。

伊藤みどり神も教えるのは天才的に「うまい」ですよね。相手のレベルを瞬時に見抜いて確実に伝わる表現で指導をなさる。姐さんがしゅーぞー大明神の指導方法にイマイチ疑問を隠せないのはみどり様の無駄のない指導を知ってしまうとしゅーぞー大明神の「パフォーマンス」がどうも大げさに思えてしまうせいですね。まあ実際に習ったら違うのだろうと思いますが。

で、最近、日本史をちゃんと勉強しなおそうと思ってあれこれ手にしてみた結果、わかるように書ける、読んでいて不愉快にならない文章をものすことができる、というのも学者の素養として大事だなあと思うのでした。
学者の論文でいきなりムカつくって経験、他のジャンルではなかったです(笑)。
なんだろう、何臭いと言えばいいのか、うわー、このセンセイ、普段もさぞかし、と思ってびくついていると、案の定他の学者にこてんぱんに突っ込まれていたりして、学者どうしの持論のせめぎあいって素敵すぎる~☆とどんなホラー映画よりも怖い怖いと安全な場所から眺めております。が、あんまり安全でもなくて、原典、一次資料にあたるブツにあたることができない姐さんのような一般人はあくまでも「これが原典そのままです」という既出文献を信じてそこから出発していくしかない。もちろんうのみにはできないからできるだけ複数の本にあたってまず間違いないだろうというところで折り合いをつけて進んでいく。そのときの「この著者は信じられるか」という鼻の利かせ方についても、だんだんに体感として備わってくるようです。

昔の先生たちは本当に「全人格的に」歴史とは何か、人間とは何かについて思索し続けて、そしてたくさんのお弟子さんたちにまるごとの全人格的な薫陶を与え続けていたのだなあ、といわゆるなんとか学派の功罪をも含めて思いを致すわけでした。

ゴーマンかましてよかですくわぁあああああの「自分を極度に美化して表現する某漫画家」の本を百冊読むよりもジャンセン先生の本の一ページを見るほうが「確実に歴史がわかる」気がしますね。比較すべき対象ではないのですが、わたしは「歴史家」というのが今後、世界の動向を「良い方に」導くために、もっともっと動いてくれるんじゃないか、動いてほしいと期待している部分も大きいので、長期的視野でモノを考え、人に伝わるアウトプットができる人、の存在を渇望しております。

で、身近に知らないので過去を遡って典籍の上で偉大な先人について知り、「わー歴史っておもしれー」と遊ばせていただいているわけです。
暗記のための年表とか受験のための詰め込みとかのかたわらに、「本当は何があったのか」「その人はなぜそうしたのか」という「心」の問題をも含めた、今回紹介するような良書があれば、歴史はもっとずっと広がりとふくらみと「リアルな実感」とを持って人の記憶にきちんと残るだとう、という気がします。

戦国武将に人気があるのも、彼らに実に人間臭い逸話が豊富にあるからですよね。そういう何気ないその人らしさの積み重ねが歴史になっていく、という事実。

そしてわたしは後世、ここで紹介するような「心」を記録にとどめ、「思い」を掬んでくれる学者が出るのか、懸念しています。

ちょっと古いものばかりなのですが読んでいてとても納得できたり目が開かれたり参考になった本を紹介します。

古書が高騰している、とか書いたわりにちゃっかりAmazonリンクですんで、買わずに近隣の図書館で中身をチェック、というのもありでしょう。でも手が出るうちに求めておくのもいいことだと思います。

まず今の日本がかくなったるゆえんはなぜなのか、を二百年に絞った「概要」について。
大好きなM.ジャンセン先生の本。



「われわれが学校で学んだことって一体なんだったんだろう」と一読、愕然としますわね。平易で明快。主義主張を織り込まず、きわめてニュートラルな立場を取った外国人の目で語られる日本の歴史。

著者のM.ジャンセンさんはとてつもない秀才でアメリカの日本学者の権威です。たいへんに優しく面倒見が良い素敵な人柄の先生で、学部の生徒ではない学生たちも先生、先生と彼を慕って集まったとか。著者近影は完全に宇宙人ですけども。ええ。今まで見た中でもっとも「宇宙人だ」と思う外観の持ち主です。偉恩ある大先生を宇宙人呼ばわりせずにはいられないのが姐さんですが、いや内容は素晴らしいです。「そういうことだったのか」と何度も頷きました。

中立的な立場でものを考え、ありのままを見ていながら、その視線が途方もなく「優しい」のが特徴的だと思います。水のようにさらさらと綺麗な文章で、それがあたたかな温度を保っているような、著者の見ている「日本史」について、今だからこそ考え直していきたいし、誇るべき点は伸ばしていきたい、伸ばしていくべきだ、と思うのです。

で、明治に至るまでの日本における歴史が動く要点をまとめたものがこちらです。
人は何を重んじて来たのかを年代ごとに整理している。そしてそれが実に痛切な告発にもなっている。

中村直勝大師匠。ここは著作集より第七巻。



あの林屋辰三郎先生の師匠筋、と申し上げると「わーーー!」となる方もいらっしゃるかもしれないですが、中村直勝先生のこの著作集をなぜ版元は絶ったのだ。今こそ復刻再販をと強く望むものであります。なんとなれば中村先生の全人格を投入した中村哲学ごしの「日本史」というのはものすごく面白いのです。なんというか滋味にあふれる生きた歴史をそのまま提示してもらえる。筆が滑ったのでコーヒーを飲もう、と執筆時の率直な感慨もすべて織り込まれた一般向けの内容でも、一切の容赦ない学者の目から書かれた論文でも、本当に惜しみなくすべてを伝え、世界を少しでも良くしていこうと尽力されているのがわかります。

身近に接したらとんでもないうるさ方だったのかもしれないですが、いやもう生前にお会いしたかった人のおひとりです。

すべての巻をぜひと言いたいところですが、七巻を最初におすすめするのは、日本史を動かしたものを先生なりにピックアップして「なぜこうなのか」を詳述している前半部分が非常に示唆するところ大だったのです。

姐さんは日本史で何を一番やりたいか、と訊かれたら迷うことなく「継体天皇」と答えますが、南北朝近辺もじっくりやりたい。中村先生はまさに南朝や荘園制度のスペシャリスト。しかして神社に長男として生まれた先生が神職を目指すことなく歴史学を志した理由というのがふるっていて、「武将やら兵やらいっぱいいるけど、その時代時代にどうやって食べていたのだろう」というところだったというのがきゃー先生わかりますーーーという共感ポイント。

原典にあたりまくってきた大先生ならではの豊富な知識見解から一知半解な若手の意見をバッサリ両断するのも痛快なら、逆賊、天魔と罵倒非難中傷され続けた英雄の行動原理を鮮やかに提示して覆してみせるのもお手の物、そしてどこまでも自省を忘れず自分が何を言っているのか、を常に把握しているアダルトな筆致の洒脱さと真摯さ。

この世で一番カッコいい職業は歴史家かもしれない!と蒙を大いに啓かれました。

じゃあ明治に入ってからの世相はどうだったのよ、ということで出ました山路愛山!
好きですね~。



明治の元勲たちの行動原理を分解し、はたから見ての推察ではありますがなるほどと膝を打ちたくなるような明快な謎解きをしてみせる。また、商い全般についての指南から国策までを縦横に論じ、一気呵成に読ませる力はすごいです。
山路愛三はその経歴や宗教信心などもぶっとんでいますが、とにかく多作で猛烈に執筆をし続け、それのどれもがある水準に達していて何よりも「すごく面白い読み物」になっているのが実に立派だと思います。
布教活動の一環として信州に移住し、信濃毎日新聞主幹として売り上げを大幅にあげ、各地の新聞社が山路のような主幹をこぞって東京から招き、丁々発止活躍させるなと逸話にも事欠きません。

山路愛山は独特の視点から人物史を多数ものし、とくに足利尊氏伝などは本人に読ませたいほどの内容で痛快至極です。
今回紹介した本も、姐さんは随所で爆笑しながら読みました。根拠を明示して堂々の論陣を張りつつ自他を笑いのめすことができる余裕のある口が悪いオッサン、というかんじです。大好き(笑)。

トップが馬鹿だとずいぶんと馬鹿ばかり集めた団体になるよね~なんて箇所は「うわー。橋本性子に読ませたいいいいい」とのたうちまわって笑いました☆



明治までの日本で「実際に何が起きていたのか」を知りながら「現代」に生きるわたしたちが、「日本」を確実につないでいく。

その一助として必ずや参考になるべきものと確信する、平易で明快で希望に満ちた、この三冊をおすすめします。




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日本人として生きるということ | コメント(2) | トラックバック(0) | 2016/01/08 01:58
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