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町田樹の「セカンドキャリア」



2013年のグランプリファイナルを現地観戦し、まっちーのことを記事にしました。
もう4年も前のことなんですね。
出場していない真央ちゃんの姿が印刷されたフラッグが町にはたなびき、パンフレットにも真央ちゃんがいた。
スケート専門というわけではなく、そんなに詳しくない担当デザイナーさんが「美しさ」で選んだら真っ先に浅田真央だったとうかがっています。確かに真央ちゃんの演技は美しい。シルエットだけで真央ちゃんだ!とすぐわかる。

その記事、なんですが、ヒャッハーと思って帰ってきたら「引退します」だったわけで。

GPF 町田選手の「魂の」フリー(2)

うん、そうだろうな。実際ファイナルも卒論提出とかぶっていて本当は辞退したがっていたと後からもれ聞こえてきましたし、町田くんが出すはずの本が予約まで取り出してから突然「謎の出版中止」。

まっちーの劇的な引退宣言、スケ連の誰一人聞いていなかった、のが、「そういうこと」なんだろうと思います。



江戸のころは「渋好み」と言いまして、自分の実年齢よりもちょっと上の年代向けの枯れた装いをするのが「粋」なことでした。「粋」かどうかというのは江戸っ子にとっては真剣に死活問題で、粋でないこと、すなわち「野暮なふるまい」をすることはたいへんにみっともなくて人間失格レベルの大問題でありました。

野暮というのは、自分の都合でいっぱいで、相手の気持ちや置かれた立場を考えてあげられない、無神経で不届きで「決して巻き添えにされたくない薄らみっともない大惨事」で、早い話「あの人は野暮天(やぼてん)だよ」などと噂が立つと異性にモテなくなるどころか友達は減り、仕事にあぶれ、おまんまの食い上げレベルの大問題です。

野暮だ、と指摘してあげる「優しさ」を示す人間もまわりからさっと消えます。言ってもわからない人間は「いないこと」にされるのです。

一度野暮天の烙印を捺されると、もうダメです。たとえ日本橋生まれだろうが神田で産湯を使おうが「田舎者」扱いです。
本当に辺境の地で生まれて育ったかどうかではなくて、「粋」という概念を解さない、ようは「異文化に所属する者」すなわち「いなくていい人間」にされるのです。

だから本当の江戸っ子にとって「田舎者扱い」というのは耐えがたい屈辱です。

「粋」というのは逆に、すっきりしていて、無駄がなくて、気持ちの上でひっかかる箇所が何もない、ようするに、見ていてすかっとする清潔で爽やかで気持ちが晴れやかになる状態。
これが大変尊ばれました。

バルセロナで見たまっちーは、じわっ、じわっ、と「自分の演技」で観客をひきこんで、「自分の力」で賞賛をもぎとった。
まさにガチの戦いをしていました。

あれで一気にファンになり、そして「引退宣言」で奈落の底に落ちた人も、ヨーロッパにはいたのではないか。

実に粋で、実に悲しいやめ方だった。

スケ連も、残酷なことをしたものです。まっちーなのに。

まっちーは、セカンドキャリアの研究をなさっていると聞いています。で、学術論文を執筆し、賞を取り、研究生活を非常に高いレベルで続けながら、こうしてショーに出てすさまじい「タツキワールド」を見せている。これは並大抵の努力ではなかったろうと思います。

カーニバルオンアイスで生のタツキを見られた方は一生の宝物でしょうし、テレビ放送で見た方は「なぜ行かなかった」と悔やむでしょう。

そして、まっちーだからこそできることがあるのだと、姐さんはここで書いておきたいと思います。

江戸のころ、江戸で暮らす人たちは、「老い」という、誰にとっても生まれて初めて経験する状態をとても大切に受け止めて、誰も若作りなんかしなかったし、老人を馬鹿にするということもありませんでした。

たとえ一日の違いであっても年長者は、自分よりは最初から上の存在です。あの時代、あの暮らし、あの日々の中で、たとえ一日でも長く生きているということは、敬意に値するものだった。

一日でも長く生きているということは、一日多い、経験値、人生知、生きる叡智があるとみなされていたのです。

だから、「老いること」は素敵なイベントのようなもので、これまでにできたことができなくなる、これまで普通だったことが普通でなくなる、これまで無意識だったことに自覚的に向かう必要性が出てくることを、みんな楽しんでいたのです。

そうではない人もいたかもしれない。でも、「自然に」生じてくる現象に対して、不必要にじたばたあがくということは「野暮」ですから、そういう人は「若作り」と耳こすり(陰口)を言われました。

まっちーは、今回も「町田樹」が思う理想、町田樹が見た理想を、ほぼ完璧な、本人も納得の完成度でわたしたちに見せてくれた。
これは誰にでもできることではありません。

まっちーは、やり遂げました。

強い方です。すごいです。

だからこそ、そんなタツキさんだからこそ、姐さんは心からお願いしたいことがある。

まっちーは、これからもずっと、できる限り長く氷上に立ち続け、そのときどきの、その時点での「最高の町田樹」を見せてほしい。

「年をとったから、もう滑れない、なんてことはない」ことを、見せ続けてほしいのです。

老いることは、滅びること「ではない」のだと。何歳になっても人というのはその各時点で最高の美しさを見せているものなのだと。

理想の恋、理想の愛、というものは「他ならぬ、まさにこの瞬間」にこそ花開き続け、それは最終的に死、ごときに滅ぼされるものではないのだと。

「永遠」はある、この世にある。
なぜならフィギュアスケートという総合芸術のこの現場に、町田樹がいるのだから。


まっちーになら、それを証明できると思いますし、まっちーにしかできないと姐さんは思います。

三十代、四十代、五十代、六十代。七十代。八十代。

そのときどきの「町田樹」で人前に立つ。立ち続ける。

タツキという名前の通り、この世で最初にご両親からもらった「お札」の通りに、まっちーよ、あなたは人前に立ち続け、そのときどきのあなたの理想を、みんなと共有すべきです。

老いたなりの美しさ。去年できたことが今年はできない。来年はもっとできないだろう。

だけど、「表現」において一体それがなんだというのか。「そんなこと」が障害になって伝えきれないほどのモノであるのなら、最初から値打ちも意味もなかったのではないだろうか。

表現芸術、ことにフィギュアスケートのような身体表現の場において、究極の目標は「何もしない」ことにある。

何もしないで「ただ、そこにいる」だけで、圧倒的な衝撃と感動と歓喜とを、人に与えられるようになること。

つまりは「存在」で人を説得できること。

それこそが究極の目標だと思います。

まっちーには、史上初の「その境地」をめざしてほしい。

滑るのをやめてはいけません。絶対にいけません。それは人類の損失です。


何があっても氷の上で「そのときの真実」を全部みんなと分かち合っていくべきです。

すいませんがフランス語か英語が得意な方はぜひ!ランビエール師匠にもこの記事を訳して見せていただきたいと思います。
まっちー自らドイツ語に訳して見せるんでもいいですよ!(姐さんにはできないwwwwww
ランビ師匠も頷くだろう、まっちーの資質を極めて正確に見抜いているとしたら、だが。

「町田樹」は自由に発展させたほうがいい、誰もさえぎってはいけない、好きにやらせたほうがいい。

フィギュアスケーター史上初の「いるだけで感動」「いるだけで観客号泣」の極みにまで、まっちーはいける人だと思います。

それはもちろん、世界に誇るべき浅田真央や髙橋大輔も、等しく。けれども異なる方向性で、あくまでも「町田樹・オリジナル」で。

まっちー。君はとてつもなくでかい人間だったのだな。

わたしは、どうしてもファンだとは言えない、ファンだなどという既成の概念でこの気持ちを言い現わされたくなんかない、町田は、すごい。そのすごさを、できるだけ正確に受け止めきりたい。

「こんなもの、拝んで当然だろ」としか、今は言えない。

衝撃です。

まっちー、自分で実際にできるだけ長く滑ることで、その、裏にびっしり貼りついている「無限の面倒くささ」をもこみで、できるだけ長く滑ることで、フィギュアスケーターの、いや、身体表現を志す者の先駆者として、「自分史上最高の町田樹」であり続けてほしいと心から願います。

ファンはついていくだろう。姐さんもついていく。見届けたい。だってすごいんだもん。

まっちー。すごいよ。

漢・タツキからのアンサーだ。巨大すぎる「これが答えだ!」を見せていただきました。

現地観戦の方に神の祝福を。町田樹の演技を目撃した人間として、まっとうに生きていってくださいね。
ダンス・ウイズ・ウルブス的に「マチダの演技を見た人間」として魂に赤い字で書かれていますからご注意をw


「最後に残るのは人格である」


証明、終わり。今回の髙橋や町田が見事に証明してくれた。


まっちーにはセカンドキャリアの一端として「年を重ねるごとに、その年齢にあった演技」を老いてもずっと続けてほしいと切に願っています。そのときどきできっと素晴らしいだろう。

と、書いた瞬間に「もう滑りません」とか言い出しかねないのがまっちーですが、それはなしでお願いしたい。本当に。



まっちー、ありがとう。いったい君はなんやねん、でかすぎるぞ!






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町田樹 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2017/10/09 17:47
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